相続・遺言に関するコラム

遺留分

遺留分とは?


遺留分とは、人が死亡し、相続が発生した際に、残された一定の範囲内の相続人に最低限の取り分の確保を保障する趣旨で設けられた民法の規定のことです。んっ、そもそも相続人って財産がもらえるはずだから、そんな規定って意味あるの?と思われた方はこの記事を読んでいただければきっとおわかりいただけると思います。

例えば、Aさんが生前に遺言を作っており、その遺言の内容が「XさんにAの全財産を遺贈する」となっていました。Aさんには配偶者Bと子C(Cは成人)がいます。XさんはAさんの愛人でした。その後、Aさんが死亡し、相続が開始しました。BCはそんな遺言の存在をまったく知りませんでしたが、突然Xが遺言書をもってBCの前に現れ、「遺言書に全財産をXに遺贈するとなっているから、Aの財産はすべて私のものっ!」と言われました。こんなことを聞かされたBCは当然びっくりします。はたして、BCは何も受けとることができないのでしょうか。

 

ここで一旦考えてみます。今回のケースでは法定相続人は配偶者Bと子Cとなり、法定相続人であれば相続人とその割合(基本編)のとおり法定相続割合はB:1/2、C:1/2でAの財産を2人で話し合ってわける(遺産分割協議)ことになります。しかし、今回のように「遺言」がある場合には、原則として法定相続よりもまず遺言の内容が優先されてしまい、たとえ相続人でない人に対して遺贈するとの記載があれば(受遺者といいます)、遺言にもとづき受遺者が財産を受け取ってしまうのです。遺言は被相続人の最後の想いや望みが書かれているため、それが優先されるのです。(もちろん、遺言の作成方法や内容的に法的に有効な遺言であることが前提です)

この事例では、Xが承継可能な全財産を引き継ぐことになります。(ここでは省略しますが、この事例のような遺贈を包括遺贈といい、相続人とまったく同じ扱いとなり、実はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産つまり借金などもあれば引き継ぐことになります)
BCとしては、何で関係のないXに財産を持っていかれなければいけないのか、そんな理不尽がまかり通るのかと到底納得できるはずもありません。そこで登場するのが「遺留分」という制度なのです。

被相続人が特定の相続人や第三者に生前に贈与または死亡により遺贈をして、それによって一定の範囲の相続人が受けるべき最低限の相続財産(遺留分)が侵害された場合に、その侵害された相続人が、贈与や遺贈を受けた相手方に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるのです。(令和1年7月1日以降に発生した相続については遺留分侵害額請求権といいます)

ただし、遺留分を侵害された相続人は何もせずただ待っているだけで自動的に侵害された金銭の支払いを受けられるわけではなく、遺留分侵害額請求をしてはじめてこの請求権が具体的権利となります。また、後述しますが行使の期間も決められていますので注意が必要です。また、遺留分を侵害された相続人は、この請求権を行使しないという選択肢をとることもできます。

遺留分権利者と割合


では遺留分について少し詳しく見ていきます。

(1)誰が遺留分を持っているか(遺留分を持っている一定の相続人を遺留分権利者といいます)
 ①配偶者
 ②子や孫(直系卑属)
 ③父母や祖父母等(直系尊属)
となります。
他に法定相続人になりうる兄弟姉妹や甥姪(代襲相続時)は遺留分が認められていません。制度趣旨が被相続人により近い近親者は、被相続人の財産を今後の生活のよりどころにしないとならないため、このような規定となっています。なお、③父母などの直系尊属は、自分が法定相続人となる場合にのみ遺留分権利者となりますので、先順位相続人の子が相続人となる場合には遺留分を持ちません。



(2)相続人全体で遺産のどのくらいの割合を保障されているのか(遺留分割合)
まず、遺産全体に対してどのくらいの割合が相続人全体で遺留分としてキープされるか(総体的遺留分割合)から説明します。
(2-1)遺産全体に対して保障される割合(総体的遺留分)
 ①配偶者や子が相続人となる場合は、遺産全体の2分の1
 ②父母など直系尊属のみが相続人となる場合は、遺産全体の3分の1

 

次に、その総体的遺留分に対して各相続人が個別にどのくらいの割合をもつかという割合(個別的遺留分割合)を見てみます。
(2-2)総体的遺留分に対する各相続人に保障される割合(個別的遺留分)
 各相続人につき、総体的遺留分×法定相続割合=個別的遺留分割合
となります。

言葉だとわかりづらいので
具体例で見てみましょう。

【被相続人A、配偶者B、子Cの場合】
 総体的遺留分は、全体の遺産に対して2分の1となります。
 (
上の(2-1)①のケース)

 次に、各相続人の個別的遺留分を計算します。
 Bの個別的遺留分=1/2(総体的遺留分)×1/2(配偶者の法定相続割合

         =1/4となります。
 C
の個別的遺留分=1/2(総体的遺留分)×1/2(子1名の法定相続割合
                               =1/4となります。

   なお、子がCDの2名の場合は、
 C、Dの各個別的遺留分=1/2(総体的遺留分)×1/4(子2名の法定相続
        
割合)=1/8となります。
         ※配偶者Bの個別的遺留分割合には影響はありません。


ではこのケースはどうでしょう。
【被相続人A、配偶者B、兄Cの場合】

 総体的遺留分は、全体の遺産に対して2分の1となります。
 (
上の(2-1)①のケース)

 次に、各相続人の個別的遺留分を計算します。
 Bの個別的遺留分=1/2(総体的遺留分)×3/4(兄弟姉妹とともにする相
 続での配偶者の法定相続割合
)=3/8としたいところですが、兄Cはそも
 そも遺留分権利者ではないため、総体的遺留分を分ける必要がなくその全
 部である1/2が配偶者の個別的遺留分になります。


 

というように、相続人の組み合わせにより、遺留分権利者と割合が異なります。

遺留分権利者と総体的遺留分
個別的遺留分割合

遺留分侵害額の計算

次に、遺留分は侵害されてはじめて請求ができます。
遺留分の割合を把握した後は、金額を計算する必要があります。
例を見ながら説明します。

事例)被相続人A、配偶者B、子C、子D
   死亡時のAの財産:甲土地(5500万円)と500
万円の現金
   A
の遺言:甲土地をBに、500万円をCに相続させる
   Aは死亡の5年前にCに2000万円をあげた(特別受益)

(1)総体的遺留分を出します。
   配偶者、子が相続人になるので1/2
(2)個別的遺留分割合を計算します。
   Bにつき、総体的遺留分1/2×法定相続割合1/2=1/4
   CDにつき、総体的遺留分1/2×法定相続割合1/4=1/8
(3)遺留分の算定基礎財産を計算します。
   ①相続開始時に被相続人が有していた財産額
   ②特別受益となる相続人に対する生前贈与(令和1年7月1日以降発 

              生の相続では相続開始前10年以内のもの)
          ③その他の生前贈与(相続開始前1年以内)
   ④遺留分権利者に損害を与えると知って行われた贈与
   ⑤相続債務(被相続人が債務を負っていた場合)
  
   ①+②+③+④-⑤により基礎財産を出します。
   
   事例では、5500万円+500万円+2000万円=8000万円が算定基礎財
   産額となります。
(4)次に個別の遺留分額を出します。
   Bにつき、8000万円×個別的遺留分割合1/4=2000万円
   C、Dにつき、8000万円×個別的遺留分割合1/8=1000万円
(5)各人の遺留分侵害額の計算をします。
   ①遺留分額
   ②遺留分権利者が相続により取得した額
   ③相続債務分担額
   ④特別受益額
   ⑤遺贈額

   侵害額=①-②+③-④+⑤により計算し、その計算値が0以上にな
   れば遺留分を侵害されいることになります。
   

   具体手にあてはめて計算してみると、
   Bにつき、遺留分額2000万円ー相続取得額5500万円=-3500万円で
   侵害なし
   Cにつき、遺留分額1000万円-相続取得額500万円-特別受益2000万 
   
円=-1500万円で侵害なし
   Dにつき、遺留分額1000万円-相続取得額0円=1000万円で侵害さ
   れている。
 

   この事例ではDのみが最低限度の遺留分を侵害されていることになり 
   ます。

 

侵害されたら


遺留分が侵害されたら、どのように誰に請求すればよいのでしょうか。

その前に、相続法の改正により令和1年7月1日以降に発生した相続については、遺留分侵害額請求権となり、侵害額を金銭債権として請求する権利となりました。したがって不動産や動産などを第三者に移転してしまっても侵害額請求権に影響がでることがなくなりました。(令和1年6月30日以前に発生した相続については遺留分減殺請求権となり、贈与や遺贈を受けた財産そのものを返還するという「現物返還」が原則であり、金銭での支払いは例外という位置づけです。ここでは改正後の金銭債権を前提に説明します)


侵害額請求の相手は遺贈や死因贈与、生存贈与を受けた相続人や受遺者、受贈者となります。
ただし、闇雲に侵害した相手に請求するのではなく、侵害額請求をする場合の順序が決められており、まずは「遺贈を受けた相手」に請求をし、それでも侵害額を満たせないときは次の「死因贈与の受贈者」に、さらにそれでも侵害額を満たせないときに「生存贈与の受贈者」に請求していきます。ちなみに生前贈与は日付の新しい贈与から請求していきます。また、複数の遺贈がある場合には、遺言者の特別な意思表示がない限り、遺贈の額の割合に応じて請求する必要がありますので、複数受遺者のうち一人に遺留分侵害額の全額を請求することはできません。

次に請求の方法ですが、限定された方法の定めはありませんので、口頭でも手紙でも行使は可能です。まずは、相手との話し合いから始め、話し合いで合意形成できれば合意書などの書面を作成して相手方からの支払いを受けることになります。(必要に応じて公正証書にしておくことも有用かもしれません)
もっとも、話し合いでまとまらない場合は、裁判所の調停、訴訟の手続きを取っていくことになります。したがって、はじめから当事者同士の話し合いが期待できない場合などは、このあとで触れる消滅時効の問題もあることから、内容証明で相手方に遺留分侵害額請求権の行使書面を送ることも検討すべきでしょう。


遺留分の侵害を回復するための請求権には、行使できる期間に制限があることに注意が必要です。具体的には、遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知った時から1年間この請求権を行使しないときは消滅時効により使えなくなります。また、相続の開始から10年経過した場合にも使えなくなります。


前の事例の場合、Dは侵害されている1000万円を受遺者であるBCに対して請求していくことになります。請求の割合は、Bが5500万円分の不動産を、Cが500万円の遺贈を受けていますので、1000万円をこの割合で請求します。(Bへの割合=5500万円/6000万円=11/12、Cへの割合=500万円/6000万円=1/12)

 

時効と放棄


遺留分について、侵害されていればいつでも相手方に請求できるのかという点ですが、民法に規定があり、次の場合には遺留分侵害額の請求が使えなくなりますのでご注意ください。

①遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき
②相続開始から10年を経過したとき


次に遺留分の放棄を見てみましょう。ここでいう放棄とは、相続放棄とはまったくちがうもので「遺留分の放棄」のことで、相続放棄はそもそもそも相続人でなくなる効果があるのとは異なり、遺留分のみを放棄することになるため、遺留分を放棄した者が相続人であることには変わりありません。
実は被相続人の生前、死後の両方で遺留分の放棄をすることができますが、その方法は異なります。
①「被相続人の生前」に遺留分の放棄をする場合
 遺留分権利者が家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の遺留分放棄の許可を得る必
 
要があります。これは他者からの強制強要などで遺留分を放棄するのではなく、
 遺留分権利者自らの意思で遺留分を放棄する必要があるからです。

②「被相続人の死後」に遺留分の放棄をする場合
 遺留分権利者が、遺留分を侵害している人に、遺留分を請求しない旨の意思表示
 で放棄をすることができます。ただし、前掲の時効等に請求権がかかってしまう
 とそもそも放棄をすることも不要になります。

特に生前の遺留分の放棄は、遺言などで特定の相続人に財産を厚くまたは集中させるような場合に、遺言通りの内容の実現に有効な手段となります。ただし、生前に遺留分の放棄をしてもらいたいと思う相続人には例えば代償分を渡して放棄への理解を得るなどの配慮をするなど調整をする必要があろうかと思われます。

 

 

まとめ

以上のように遺留分について見てきました。
遺言を作成するうえでも遺留分を踏まえるなどの工夫をすることにより、あなたの想いが実現しやすくなることがあります。

相続について少しでもご不明な点があれば、あおと事務所にぜひご相談下さい。ご相談料は無料ですので、お気軽にご連絡ください!

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